「ヤバいかも」と思った時には、もう遅かった話

らいち「これは、ちょっとまずいかもしれない…」
最初にそう思ったのは、納期の1週間前。
クライアントからの修正指示は止まらず、そもそもどのバージョンが“最新”なのかも分からなくなっていた頃でした。
最初のやりとりはスムーズだったはず。
「お任せでいいですよ」「柔軟にお願いしたい」と言われたから、こちらも安心して進めていた。
でも、ある日突然、口調が変わりました。
「いや、そんなふうにお願いした覚えはないんですけど?」
そこからは坂道を転げ落ちるように、やりとりはギクシャクし、タスクは増え、気づけば納期を守るために徹夜続き。
報酬は据え置き。感謝の言葉もなし。
「なんでこうなった?」と自分を責めるしかありませんでした。
このような「炎上案件」。
できれば経験したくないけれど、多くのフリーランスが一度は通る道でもあります。
この記事では、実際に僕が経験した(もしくは周囲でよく耳にする)炎上案件の事例を紹介しつつ、
・どうして起きてしまったのか
・どうすれば防げたのか
・次に活かせる教訓とは?
という点を、できる限り具体的に共有していきます。
「これ、自分のことかも」と思った方にこそ、読んでいただきたい内容です。
そもそも「炎上案件」って何が起きるの?


「炎上」と聞くとSNSの話のように聞こえるかもしれませんが、Web制作においての“炎上案件”とは、
・納期が大幅に遅れる
・修正が無限に発生する
・クライアントとの認識が噛み合わない
・作業量が当初の見積もりを大きく上回る
・最悪、報酬が支払われない/揉めて契約終了
といったような、“仕事として成立していない状態”を指します。
また、フリーランス界隈でよくある炎上パターンは以下の5つが多いのかなと感じています。
・要件を聞ききれていなかったので、後出し仕様の連発
・初動で「お任せします」と言われ、 進めたら「違う」と言われる
・複数の担当者がいて、指示がバラバラ
・連絡が途絶えたと思ったら、いきなり「明日までにお願いします」
・細かすぎる修正が何十回も発生
炎上の原因トップ3(実体験から)


僕が今まで聞いたり、体験してきたりした炎上案件の原因には、傾向があると感じています。
その中でも、特に多い炎上の原因TOP3をご紹介します。
① 初動の曖昧さ
ヒアリングなどの初動が曖昧だと、雰囲気で進めていくことになり、後々修正が多発することに繋がり得ます。
例えば、「お任せします」、「柔軟に」などの言葉を鵜呑みにして、仕様を詰めずに進行し、認識ズレが発生するパターン。
このパターンは作業者側が、お互いの認識を具体的にしなかったことが原因です。
採用ページを作成するとして、片方がリクルートのようなスタイリッシュなイメージを持っているのに対し、
もう片方はディズニーランドのようなエンタメよりなイメージを持っているとしたら、認識のズレが起きないわけがないですよね。
大袈裟に言っているかもしれませんが、往々にしてこのようなことが現場では起きているのが現実です。
なので、他人事ではなく、自分ごとに捉えて、ぜひこの後も読み進めてください!
② 契約書・仕様書の未整備
契約書・仕様書の未整備により、後々言った言わない問題になること多くあります。
例えば、料金や納期を口約束でスタートし、 「言った/言わない」、「そんなの聞いてない」が勃発するパターン。
このパターンは作業者側が、言ったことを文面や書類に残さなかったことが原因です。
Web制作以外の場面でも、多くのシーンで炎上案件になり得る原因でもあると思います。
ただ、実際にフリーランスとして独立しても契約書を撒くのを忘れる人が多いです。
わかってても、実際に自分で体感しないと人は動けないものなので、忘れてしまうのも分からなくもないです。
実際に、僕もその当事者でもありますし。
③ 期待値のコントロール不足



期待値のすり合わせができていないと、「思ってたのと違う」「そんなはずじゃなかった」というズレが、じわじわとボディブローのように効いてきます。
たとえば、クライアントが「プロにお願いしてるんだから、スマホ最適化も当然だよね?」と考えていたのに対して、こちらは「スマホ対応はオプションで別料金です」という認識だったとしたら、トラブルにならないわけがありません。
このパターンは、“言語化されていない期待”を、事前に拾えなかったことが原因です。
特にWeb制作のように「完成品のイメージ」が人によってバラつく分野では、初期の時点で「やること」と「やらないこと」を明確に線引きする力が求められます。
僕自身、過去に「ここまでお願いしてると思ってました」と言われて、追加作業で徹夜した経験があります。悪意はなくても、「言っていない=伝わっていない」のに、つい「常識でしょ?」が先に立ってしまう。
だからこそ、
「今回のご依頼で“当たり前に含まれている”と思われていることってありますか?」
事前にこう聞くようにしています。
ちょっとした一言で、想定外のリスクがグッと減るんです。



では、それがどんな場面で起きてしまうのか?
次のセクションでは、僕が実際に経験した“炎上エピソード”を3つご紹介していきます。
実録!フリーランスが体験した炎上案件集


① 要件を曖昧にしたまま着手
あるとき、知人の紹介で受けたWordPressの構築案件。
クライアントは個人経営の方で、「だいたいこんな雰囲気で」、「細かいのは後で大丈夫」と軽いノリ。
僕も「関係性もあるし、任せてもらってるなら大丈夫だろう」と思って、そのまま制作に入りました。



が、ここから地獄の始まりでした…
初稿提出 → 「あ、こういう構成じゃなくて…」
修正提出 → 「この色はちょっと…」
修正3回目 → 「トップの構成ごと変えられる?」
仕様書もなければ「ここまでが対応範囲です」という線引きもしていなかったため、断る理由がなく、修正がエンドレスに続いていく状況に。
最終的に、デザイン案は5回以上差し戻され、コーディングも2度やり直し。
納期は2週間遅れ、報酬はそのまま。



メンタル的にもきつくて、「もう二度と知人経由の“お任せ系案件”はやらない」と誓いました。
② 連絡が途絶えたと思ったら突然「明日までに」と言われる
クラウドソーシング経由で受けた企業のLP制作案件。
ヒアリングまではスムーズに進んだものの、初回のデザイン提出後、クライアントからの返信がパタリと止まりました。
こちらとしては「次の指示が来るまで待つしかない」と思い、その間は別の案件を進めていたのですが、
1週間以上経って、突然こんなメッセージが届きます。
「すみません、社内の確認が遅れてました。明日までに納品してもらえますか?」



!?
え、修正内容も聞いてないのに、いきなり納品?
しかも「明日」って…。
そこから慌てて連絡を取り、修正依頼を受け、朝までかけて作業を終えたものの、結果としてその対応により他の案件の進行にも影響が出てしまいました。
このとき感じたのは、「納期がある=作業時間が確保されている」という前提が共有されていなかったことの怖さ。
以降は「◯日までにご確認がない場合、納期は再調整になります」という文言を毎回入れるようにしています。
③ 指示がコロコロ変わるディレクター案件
制作会社経由で受けたWebサイトの下請け案件。
窓口になっていたディレクターは親切な方だったのですが、複数人の意見をまとめながら進行していたようで、指示が毎回違いました。
初稿:「このパーツ、グラデでお願いします」
修正後:「やっぱりフラットにしましょう」
最終:「このセクション、いらなかったみたいです」



僕はそのたびにデザイン・コーディングをやり直し。
作業ボリュームは2倍近くになっていましたが、契約上「修正は報酬内で対応」となっていたため、追加請求もできず。
正直、「自分のやってる作業って何なんだろう…」と感じた案件でした。
最終的に無事納品はできましたが、“決定権が誰にあるのか”が曖昧なまま進める案件は危険だと学びました。
どの案件も、最初の段階では「大丈夫そう」と思っていたものばかりです。
つまり、炎上案件の多くは、初動で“なんとなく”を見逃したことから始まっているのです。
炎上案件に共通していた“初動の落とし穴


炎上案件をいくつか経験して感じたのは、最初のやりとりが曖昧だった案件ほど、後々トラブルになりやすいということです。
実際に振り返ってみると、「うまくいかなかった案件」にはいくつかの共通点がありました。
① ヒアリングが“雑談”で終わっていた
特に知人経由の案件でありがちだったのが、ヒアリングがラフすぎて要件が曖昧なまま進行してしまったパターン。
「だいたいこのサイトみたいな雰囲気で」
「お任せします、プロに任せたほうがいいでしょ?」
「あとは感覚でいい感じにしてくれたらOKです!」
当時の僕は「信用されてる」と思っていたけど、実際はただ明文化していないだけで、お互いのイメージはまったく違っていたのです。
② 契約書・仕様書がなかった(または超ざっくり)
口頭やチャットだけで「じゃあよろしくお願いします」と進行。



その結果、こうなります
・どこまでが“無料修正”なのか分からない
・いつ納品すればよいかの基準がない
・途中で「ここもお願いできます?」と追加依頼が来る
・しかも、“その追加は有償です”と言うと「そんな話は聞いていない」と揉めることも。
明文化されていない“善意”は、あとからトラブルを呼びます。
③ 「まあ、いけるでしょ」の油断
特に案件が続いて少し慣れてきた頃、「このくらいなら問題ないだろう」と初動をおろそかにしたことがありました。
例えば…
・要件をメモしていなかった
・タスク管理ツールを使わなかった
・返信ペースが遅くなってしまった
結果として、相手の信頼を損ねたり、修正指示が漏れたりして、炎上の火種を自分でつくってしまっていたんです。



振り返って気づいたポイントは以下の3つです!
・「お任せ」は、“何を任せたか”を書き出す必要がある
・チャットのやりとりも、簡単にまとめてドキュメント化するべき
・契約書がなければ、せめて“対応範囲メモ”と“納期確認”だけでも明記する
今思えば、炎上案件は「進行中に起きた問題」ではなく、「最初のすれ違い」が引き金だったことがほとんどでした。
僕が学んだ“回避のための習慣と仕組み”


炎上案件が起きたとき、「クライアントの対応が悪かった」、「丸投げだった」などと思うこともあります。
でも、すべてが相手のせいかといえば、必ずしもそうとは限りません。
振り返ってみると、こちらにも「確認不足」「ルールの明文化不足」「違和感を見逃していた」など、改善すべき点がいくつもありました。
自分が改善できたことをベースに「再発防止策=習慣と仕組み」をご紹介します。
① 事前確認&ドキュメント文化の徹底
まず始めたのが、ヒアリングや決定事項をNotionやGoogleドキュメントで一元管理すること。



これをやるだけで、「言った/言わない」のトラブルがほぼゼロになりました。
クライアントにも「ここまでやってくれるんだ」と安心してもらえるので、信頼感もアップします。
② 仕様変更は「別見積り」にする勇気
以前は、どんな修正も「まあ対応できるし…」と引き受けていました。
でもその結果、報酬は変わらないのに作業時間はどんどん増えるという悪循環に。
今は契約段階で、以下のような表記を入れています。
これを提示しておくことで、お互いに“対応の線引き”ができるんです。
クライアントによっては「そこまでしなくていいです」と言われることもありますが、それでも姿勢を示しておくことが大切だと感じています。
③ 「違和感」を見逃さない目と行動
そして何よりも大事にしているのが、初動で感じる“違和感”を無視しないことです。
・「返信が遅すぎる」
・「人によって言ってることがバラバラ」
・「質問してもはぐらかされる」
こういったサインが出たときは、
「念のためここまで確認しておいてもいいですか?」と深掘りしたり、
場合によっては「今回はスケジュールの都合でお受けできません」と丁寧に辞退することも選択肢にしています。
炎上を完全に防ぐのは難しいかもしれませんが、
「起きる前に防ぐ」「起きても最小限で止める」仕組みを用意しておくだけで、かなりリスクを下げられます。
炎上したって大丈夫。次に活かせばそれでいい


炎上案件を経験すると、自信を失ったり、「自分にはフリーランス向いてないのかも…」と落ち込むこともあります。
僕も実際そうでした。
・クライアントに怒られて凹む
・無償修正で何日も潰れる
・せっかく頑張ったのに、感謝どころかクレーム



「やってらんないな」と思ったこと、何度もあります。
でも、少し時間をおいて振り返ると、「あれがあったから今の自分がある」と言える経験になっていました。
・修正が多すぎた案件 → 修正回数の事前合意が大事だと学べた
・放置された案件 → タイムラインの明文化が必須だと痛感
・デザイン提出時:「ここまでが初稿の内容です」と明記
その時はキツかったけれど、次に同じミスをしないための“財産”になっているのです。
「成功体験」だけでは見えない学びがある
うまくいった案件より、炎上した案件のほうが、何倍も自分を成長させてくれました。
そうした“次に生かせる力”が、確実に身についていくのを感じています。
最後に|自分を責めるより、次をよくするために
もし今この記事を読んでいるあなたが、「炎上したかも」と感じているなら、大丈夫です。
誰でも通る道だし、ちゃんと次につなげられれば、それはもう“価値ある経験”です。
完璧な進行を目指すより、「失敗しても次に活かせる自分」になることの方が、ずっと大切だと思います。
炎上案件は、つらい。
でも、それを「自分だけのマニュアル」に変えていくことで、あなた自身の“進め方”が磨かれていきます。
そしてその“進め方”こそが、次の案件で選ばれる理由になるはずです。
ここまでご覧くださりありがとうございました!









